フィールズ デジタルアニュアルレポート2016

マネジメントメッセージ

本年4月に発生いたしました平成28年熊本地震により被災された皆様、そのご家族や関係者の方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い心身とものご回復と地域の復興をお祈り申し上げます。

CEOメッセージ 代表取締役会長 山本英俊

株主、投資家の皆様をはじめ、ステークホルダーの皆様におかれましては、平素より当社へのご理解とご支援を賜り、心より感謝申し上げます。

創業から現在まで

当社のこれまでの歴史は、まさに「挑戦」の一言に尽きるものでした。人々の人生が感動や興奮にあふれ、心豊かなものであるために、当社は何ができるのか。創業以来それを突き止めるため、常に未来を見据えて挑戦を続けてきました。
1980年代、日本においては人々が暮らすいたるところにパチンコホールが存在していました。パチンコホールは人々が余暇を楽しむ身近な場として、多くのファンに支持されていました。当社は、この人々の身近な娯楽に大きなポテンシャルを感じました。パチンコ・パチスロを地域密着型の価値あるエンタテインメントに変える、この実現に向け当社は事業を起こしました。
当時、「1ホール=1メーカー」という業界慣習がありました。そのため、一つひとつのホールはそれぞれある特定のメーカーの遊技機だけを設置する偏った遊技機ラインアップでした。パチンコファンは本当にこれを望んでいるだろうか、満足して楽しめているだろうか。当社は流通改革に着手しました。ホールが幾多の新機種の中から遊技機を選定し、ファンに提供できるよう様々な提案を行いました。あらゆる新機種の情報提供、競合店との差別化の提案、より良いサービスを提供するための空間のあり方など、ホール全体の新しいあり方を提案してきました。先進的なホールやその経営者の皆様に支持をいただいた結果、当社は独立系の流通商社として他に類を見ない企業へと成長してまいりました。
また、遊技機においてディスプレイの液晶化を原動力としたハードの進化に合わせ、大手メーカーと提携し、キャラクターやストーリーなどのIPを活用した商品開発を推進してきました。パチンコ・パチスロを、勝ち負けだけではない、より多くの人々が楽しめる余暇とすべく、その変革に取り組んできました。多くのメーカーと提携し、当社からIPを供給してエンタテインメント性の高い遊技機を創出する、そのために2003年のJASDAQ(当時)上場後は、戦略のコアとなるIPの商品化権を、アニメや映画などのあらゆるエンタテインメントの分野から集中的に確保しました。
遊技機市場はIPを活用した遊技機が主流となり、提携メーカー以外からも同様の新機種が発売されるにつれ、当社は将来的なIPの枯渇、特に遊技機の特性に合うIPの不足を憂慮し、自らもIPの創出や保有に取り組み始めました。大手出版社との協業により月刊誌を創刊、従来の流通慣習に捉われず、大手コンビニエンスストアへの独占的な流通経路を開拓し、新たなIPを創出するモデルを構築しました。また2010年には、日本を代表するヒーロー『ウルトラマン』を創出した(株)円谷プロダクションをグループに迎え入れ、同社が保有する数多くのIPの活用を図ってきました。さらに同時に、デジタルコンテンツの活用を企図し、最先端のCG技術を有する(株)デジタルフロンティアもグループに迎え入れ、IPを中核としたビジネスの基盤が少しずつ形成され始めました。
そして2012年、IPを中核とした戦略転換を企図し、新たなビジネスモデルを発表しました。IPの取得はもちろん、自らもIPを創出保有する「IPオリエンテッド」な企業として中長期的な成長を見据え、現在、IPの循環型ビジネスを推進しています。

なぜ余暇ビジネスなのか

産業革命により農業化社会から工業化社会へ、情報革命により工業化社会から情報化社会へ移り変わってきた現代社会において、次には何の社会、何の時代が訪れるのか。当社の出した答えは「心」でした。
18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命は、工業化による急速な経済成長をもたらしました。20世紀には、それまでの技術革新からさらに進化し、商用コンピュータの導入やオートメーション化によって、過度な労働は軽減化されました。また、医療の分野においても、技術の発達により社会は長寿命化してきました。1950年頃、「人生50年」と言われていた日本の平均寿命は、2015年には男女ともに80年を超えています。社会が便利になり、人々の寿命が延びることで、自ずと人々の余暇を過ごす時間は増加してきました。
また、こうした社会の変化を背景に、メディアやプラットフォームの様相も変わってきました。日本では1950年代までは映画が主流となり、1960年代以降はテレビが普及しました。1990年代以降は、インターネットの誕生と普及につれ、多様なデバイスが登場してきました。そして、この間にテーマパークの登場や家庭用ゲーム機の大ヒットなど、エンタテインメントの世界は多様性が広がりました。
その結果、人々は現在、余暇の過ごし方において多様な選択肢を持っています。自分の好きなことを、好きな時間に、好きな方法で楽しむことができます。
当社はこの人々の余暇に対し、最高のエンタテインメントを提供することで、人々の心の豊かさに寄与してまいりたいと考えています。多様化する人々の時間消費ニーズを先取りしながら、人々の心を豊かにする商品やサービスの提供に努めてまいります。

なぜIPなのか

世界中で人気を集めるディズニーキャラクターは、時代の移り変わりとともに起こるメディアの盛衰に左右されず、世代やエリアを越えて愛され続けています。当社は最高のエンタテインメントを世の中に提供し続けるために、ビジネスの中核を成す不変的な価値を有するものを模索してきました。
当社は、広く世の中にあるエンタテインメントを俯瞰し、人々の心を豊かにする余暇の過ごし方について調査・研究を重ねてきた過程で、キャラクターやストーリーなどのIPが、人々の心に幸せや喜びをもたらす重要な一つの要素であると考えました。そのため、多くの有力企業とIPを創出または育成する取り組みを進めてきました。当社が独自のIPビジネスを拡大、加速させるために、その根幹となるのがIPに対する愛とリスペクトの念です。当社の一人ひとりがIPに対する愛とリスペクトの念を持ちながら事業活動に尽力することで、はじめてパートナーからの信頼が得られ、最高のIPを創出または育成することが可能になると考えています。
当社は、今後も様々な企業とパートナーシップを構築し、人々の心の中に生き続けるキャラクターや、人々の心に染み入るストーリーを、一つでも多く世の中にお届けしてまいりたいと考えています。

将来への思い

今や日本のマンガや映像などのコンテンツは、世界中で活躍しております。当社はIPを中核としたビジネス展開を加速させ、日本の将来を担う産業として大きな期待を集めるコンテンツ産業の発展に貢献するとともに、この世界に暮らすすべての人々に最高の余暇を提供し続ける企業であることを目指してまいります。
(株)円谷プロダクションが50年前に生み出した『ウルトラマン』は、今なお世代やエリアを越えて、多くの人々に笑顔をもたらしています。2011年に起きた東日本大震災や本年の熊本地震の際、当社グループは救援物資のほかに、子どもたちの笑顔のためにと、『ウルトラマン』とともに被災地を訪問いたしました。非常に厳しい環境の中でも、ヒーローにふれて笑顔を見せる子どもたちに、私自身、IPの持つ力や可能性、そして当社の使命や責任をあらためて教わった気がいたしました。
当社はグループ企業や多くのパートナー企業とともに、子どもから大人まで、また世界中の人々に笑顔をもたらすIPを創出し、あらゆるメディアを使って世の中に届けてまいりたいと考えています。そして、最高のエンタテインメントによって、世界中が喜びや感動にあふれることを心より願っています。

企業理念「すべての人々に最高の余暇を」

現代社会は物質的な充足感の一方で、多くの場面で心の問題を抱えています。当社は商品やサービスの提供を通じて、人々の心の豊かさに寄与する事業を行ってまいりたいと考えています。心の充足感を得て人々が幸せと感じる、そのような瞬間を一つでも多く創造していきたい、それが当社の思いです。
当社は、「すべての人に最高の余暇を」という企業理念を当社の企業活動の根幹とし、人々に感動や興奮をもたらす優れたエンタテインメントを創造することで、社会全体の幸せに寄与する企業を目指してまいります。そのために当社は、人々の生活や環境の変化を研究、分析し、そして未来を予見しながら仮説と検証を繰り返してまいりました。例えば10年後に、人々はどのような時代を生きているのか、そこで余暇はどのような存在となっているのか、そのときフィールズの事業が世の中の人々とどのような関係にあるべきか、そして私たちフィールズに何ができるのか、常に長期的な視野で当社の事業のあり方を模索してまいりました。そして当社は創業から今日までに、幅広いエンタテインメントの分野に事業領域を拡大し、企業理念の具現化を実践してきております。
「すべての人に最高の余暇を」という企業理念の下に集まった全員が一丸となって、その実現に向けこれからも前進してまいります。

これまで企業理念にご賛同いただき、多大なるお力添えを賜りましたステークホルダーの皆様にあらためまして深謝いたしますとともに、皆様からのご期待に応えるべく、今後とも精進してまいりますので、引き続き、倍旧のご支援とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2016年11月
代表取締役会長

山本 英俊

COOメッセージ 代表取締役社長 繁松徹也

株主や投資家の皆様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また、平素より格別のご支援ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

社長就任の決意と新体制の責務

本年4月に、代表取締役社長に就任いたしました繁松徹也です。代表取締役会長の山本とともに、人々の心の豊かさに寄与するためIPを中核とした当社のビジネスを加速させていく所存です。
当社は、エンタテインメントの根幹となるキャラクターなどのIPを中核にビジネスを推進すべく、数年前より多数のIPを取得・創出し、そのクロスメディア展開を図ってきました。私は2007年にフィールズに入社し、『AKB48』や『ウルトラマン』などのIPのクロスメディア展開を進めるなど、IPを中核としたビジネスの最前線に立ち、その事業領域の拡大と収益化に努めてきました。今般、社長という重責を担い、私自身、一層身を引き締め、引き続き当社のPS事業も含めたIPビジネスの拡大に取り組む所存です。
あわせて事業推進のための新体制として、映像分野において豊富なプロデュース経験を持つ鎌形英一がクロスメディア事業統括本部長に、また、長年のホール運営と経営の経験を持ち、直近は遊技機業界の未来のために人材育成にも情熱を注いできた吉田永がPS事業統括本部長に就任いたしました。当社はこれまで以上に力強く当社のIPビジネスを推進し、企業理念の実現に向け、前進してまいります。

当社を取り巻く事業環境

直近、当社を取り巻く事業環境は、創業来の事業領域である遊技機市場において、射幸性の抑制を一つの目的とした業界の健全化を図るパラダイムシフトが進み、遊技機メーカー、流通、ホールと業界全域にわたり影響が及んでいます。こうした状況が当社の業績にも影響を及ぼしていますが、当社のPS事業ではこれまでにも業界変化に対応してきた豊富な経験を生かし、この過渡期においても柔軟かつスピーディーに対応を図っています。そして同時に、全社としてIPビジネスを着実な成果へと結びつけるべく、特定のメディアに依存しない体制構築の実現に向けた取り組みを推進しています。
現在、当社グループが創出したIPにおいて、複数の映像化プロジェクトが進行するなど、ビジネスの種は着実に成長しつつあります。また、電子書籍や映像などのデジタルコンテンツのグローバル展開を積極的に推進することで、当社IPの認知拡大を図り、ビジネスを拡大、加速することに取り組んでいます。
当社はIPを中核とし、人々の多様化するニーズに対応したクロスメディア展開を推し進めることが、特定のメディアの環境変化に左右されない強固な体制を築くことになると考えています。その取り組みが現在まさに進行しており、これにより未来に向けた持続的な成長を実現していきたいと考えています。

IP価値最大化のための事業戦略

当社は事業環境などに鑑み、中長期的な戦略として以下の3点に重点を置き、事業を推進しています。

  1. 有力IPの取得・創出
  2. IP展開先プラットフォームの拡大とIPの価値最大化
  3. 展開地域の拡大=グローバル展開

1. の取り組みでは、クロスメディア戦略を軸にIPを取得・創出し、各メディアのパートナー企業と協力してIPの価値を高めていきます。IP創出の中心的な取り組みとしては、「月刊ヒーローズ」を通じたヒーローIPの創出に注力しています。
2. の取り組みでは、多様化するプラットフォームにIPを供給し、パートナー企業とともに収益を高めていきます。電子書籍を含むコミック、映像、ゲーム、ライブエンタテインメント、ライセンスビジネス、パチンコ・パチスロなど、多様なメディアにおいてパートナー企業との連携を強化し、クロスメディア展開を加速させていきます。
3. の取り組みでは、グローバル市場を見据えたIP開発を進め、電子書籍の配信事業者やSVOD事業者と連携するなどしたグローバル展開を図っていきます。特に、中国や東南アジア、北米などのエリアに対し、メジャープラットフォーマーとの協業展開を推進しています。
これらの戦略に則り、当社が目指すIPビジネスの確立を早期に実現すべく、まずメジャー化やシリーズ化が見込めるIPに投資を集中し、国内のみならずグローバルでの展開を推進しています。

当社の社会的責任に対して

人々の心に届くキャラクターやストーリーを創出し、それをあらゆるメディアを通じてグローバルに展開することで、世界中の人々に喜びや幸せをもたらすことが、当社の存在意義であり、当社の社会的責任を果たすものと信じ、今後も信念をもって取り組んでまいります。
当社グループがCSR活動の一環として展開する「ウルトラマン基金」では、2011年3月に発生いたしました東日本大震災や本年4月の熊本地震の被災地をはじめ、日本全国でヒーローを通じて子どもたちに笑顔や勇気をもたらしたいという一心で活動を続けています。そして活動を通じ、心の底からヒーローを応援する子どもたちの声援に、逆に私たちがエネルギーやパワーをいただいています。このような経験を通じても、当社の果たすべき社会的責任をあらためて強く自覚するとともに、今後もこの子どもたちの声援をしっかりと胸に刻んで精進してまいる所存です。
皆様におかれましては、当社グループの成長にご期待いただくとともに、引き続き、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、衷心よりお願い申し上げます。

2016年11月
代表取締役社長

繁松 徹也